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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)1375号 判決 1966年3月25日

上告人

西村サガ

被上告人

浄覚寺

右代表者清算人

田中秀次

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

小橋証人は一審においても尋問されており、原審におけるそれはその再尋問であるから、上告人としては、その尋問内容は充分予想しうるところである。したがつて、かりにその主張のとおり、上告人が尋問事項書を受取つていなかつたとしても、その尋問に対し異議を述べることなく弁論が終結された以上、反対尋問権を奪つたとはいえず、該証言を採用した原判決に所論の違法は認められない(昭和二七年六月一七日最高裁判所第三小法廷判決・民集六巻六号五九五頁参照)。その余の論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断を非難するにすぎないから、すべて採用するに値しない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

上告人西村サガの上告理由

四、本件において最も重要な証拠は右小橋篤太郎の証言である。その重要なる小橋証人が昭和四〇年七月二一日の原審の口頭弁論において突如(真に突如である。)尋問せられたのである。それまでの弁論において同人に対する証拠申出もなく、恐らく期日外の申出が採用されたものと思われるが、しかしもしそうだとすればその旨を相手方たる上告人に通知すべきであり、また尋問事項の要領を記載した書面を上告人に送達すべきである。(民事訴訟規則第三一条)蓋し相手方はこれにより反対尋問の準備を為す必要があるからである。しかるに前記小橋証人の場合上告人には何等の通知がなく真に突然尋問が為されたのである。このため上告人は何等反対尋問の準備を為し得ず反対尋問の権利を奪われたと等しい結果になつた。もし適法に小橋証人に対する尋問事項書等が上告人に送達されておれば上告人は適切なる反対尋問の準備をすることができ小橋証言を覆えし得て判決に影響があつたことは明らかである。何となれば同証言を外にしては上告人に不利な証拠はないからである。

五、上告人が前記小橋篤太郎の尋問に当り手続上の違背を責問しなかつたのは、その権利を抛棄したものではない。上告人は昭和四〇年八月一二日付で弁論再開申立書を提出し、その第五項において右手続の違背を主張している。この点から見ても上告人が責問権を明示的には勿論黙示的にも抛棄したものでないことは明らかである。

六、以上記載した如く本件において最も重要な証人小橋篤太郎を尋問するについて民事訴訟規則の定める手続に違背し、その違背は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決は破毀せらるべきものと信ずる。

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